1997年に神戸市須磨区で発生した連続児童殺傷事件。小学6年だった土師淳(はせ・じゅん)君(当時11)が殺害されてから、24日で28年となる。父親の守さん(69)は報道各社に手記を寄せ、事件当時14歳の加害男性へのメッセージや、犯罪被害者への支援を拡充する必要性などをつづった。手記の全文は次の通り。
今年の5月24日は、私たちの次男の28回目の命日になります。私たち家族の次男への思いは、28年という年月が経過しても変わることはありません。
加害男性からの手紙は今年も届くことはありませんでした。私たちの子供が、何故、加害男性に大事な生命を奪われなければいけなかったのかを知ることは、親としての責務だと思っています。加害男性には、自分が犯した事件に真摯(しんし)に向き合ったうえで、私たちの思いに応えるような対応をして欲しいと思います。
兵庫県で犯罪被害者等支援条例が一昨年に施行され、昨年度からは見舞金の支給制度が開始されました。事件後に、犯罪被害者、遺族は経済的に困窮する場合が多くみられるため、地方公共団体の見舞金制度は非常に恩恵のある制度だといえます。見舞金制度を制定している市町村はかなり増えていますが、金額的には十分と言えず、市町村に加えて都道府県が見舞金制度を制定することで、被害者の状況の改善に繫(つな)がります。しかしながら見舞金制度を制定している都道府県はいまだに少なく、そのような状況で兵庫県が見舞金制度を制定した意義は大きく、他の都道府県にも広がって欲しいと思っています。
犯罪被害者の権利確立を目指した活動を、強いリーダーシップで主導してきた岡村勲弁護士が今年2月に逝去されました。2000年1月の「あすの会」の設立後、岡村先生は先頭に立って活動しました。その結果、2004年には犯罪被害者等基本法が成立し、それ以降も被害者参加制度や犯給法(犯罪被害者等給付金支給法)、少年法の改正の成立など多くの成果を残し、犯罪被害者を取り巻く環境は大きく改善しました。
いったんあすの会は解散しましたが、重要課題である経済補償の問題の改善が見られなかったことに危機感を覚えた岡村先生は、2022年3月に「新あすの会」を立ち上げ、昨年には犯給金の大幅な増加が決定されました。まだ重要な課題は残っており、そのような状況で岡村先生が亡くなられた影響は非常に大きいと思いますが、残されたメンバーで岡村先生の遺志を可能な範囲で引き継いでいくことが出来ればと思っています。
犯罪被害は決して他人事ではありません。今後、一般の方々の理解がすすみ、犯罪被害者を取り巻く環境が更に改善することを願っています。
- 摘めなかった事件の芽 神戸連続殺傷、捜査1課長の告白
神戸連続児童殺傷事件とは
1997年2~5月、神戸市須磨区で計5人の児童が相次いで襲われ、小学4年の山下彩花さん(当時10)と小学6年の土師淳君(同11)が殺害された。6月には「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る犯行声明文が新聞社に届き、同28日、当時14歳の少年が殺人などの容疑で逮捕された。少年審判を経て医療少年院に送致され、2005年に本退院した。
事件を機に、01年4月、刑事罰の対象年齢を14歳に引き下げた改正少年法が施行された。