越後一宮として知られる弥彦神社(新潟県弥彦村)ゆかりの貴重な建物「社家住宅」がかつて、取り壊しの危機にありました。元高校教員の男性が身銭を切って保存に乗り出し一度は難を逃れたものの、およそ20年たって再び後継者問題が浮上しました。中国人の実業家から買い取りたいとの申し出もあるなか、所有者が選んだ道とは。社家住宅を未来へ継承するため奔走してきた鍋嶋紘一さんに聞きました。
リレーおぴにおん 「集まれば」
2006年、弥彦神社近くの参宮通りにある「社家(しゃけ)」の家を個人で購入しました。神職を世襲している一家が住むために江戸時代に境内に建てられたと伝わる家です。明治時代に神社の本殿などが焼失した大火をたまたま逃れて今の場所に移築されたのですが、後継者がいなくなり放置されていたのです。
2階建てで245平方メートルの広さがあります。式台を備えた玄関や、神棚をまつるための祖霊室もあります。明治天皇が巡幸した際には岩倉具視やお付きの人たちが投宿したそうです。全国的にも社家の建築はそれほど多く残っていない。このまま朽ちてしまっては大変な損失だと思ったんです。
以来、週末などにギャラリーやカフェとして公開してきました。16年には「旧鈴木家住宅」として国の登録有形文化財にも指定されました。
しかし近年は私も年を重ね、経済的にも個人で維持していくことが難しくなってきた。後世に引き継ぐためにどうしたらいいのか頭を悩ませることが増えました。
地元の弥彦村に引き受けても…