生物学者で青山学院大教授の福岡伸一さん(64)が、アマチュアのチョウ研究家とともに「ジャコウアゲハの極めて珍しいタイプを発見した」と、チョウと昆虫の愛好家向け雑誌で発表した。専門家は「生きものが変化していく一場面を見せてくれているのかもしれない」と述べている。
ジャコウアゲハはアゲハチョウ科の一種で、オスの成虫から「麝香(じゃこう)」と呼ばれる香料のようなにおいがすることから、この名がついた。東北地方以南の日本国内や中国の東部、朝鮮半島などに生息している。
後翅の紋消え、真っ黒に
今回見つかったのはメスで、後ろ側の羽(後翅(こうし))にあるはずの黄色っぽい模様である「紋」が表側で完全に消え、真っ黒になっていた。
発見したのは、福岡さんの友人で元公務員の鈴木康博さん(73)。これまでに約20年にわたり、千葉市にある自宅の庭や飼育用のかごを使って計600匹ほどのジャコウアゲハを飼育するなどしてきた。
現在は千葉市都市緑化植物園のみどりの相談員として、小学生らに向けた昆虫教室を毎年夏に開き、ジャコウアゲハに直接触れてもらうなどしている。ゆったり、ふわふわと舞うジャコウアゲハは、子どもたちに人気だという。
昨年6月、幼虫が主なえさにしているウマノスズクサの葉の裏側に、8個の卵を見つけた。観察を続けると、幼虫やサナギのうちはどれも違いがなかったが、7月にいずれもメスとして成虫になると、1匹だけ後翅に紋がなく、真っ黒に「黒化」しているのを確認。標本にするとともに、福岡さんに連絡した。
チョウ愛好家仲間もびっくり
福岡さんもジャコウアゲハの黒化型を目にするのは初めてで、複数のチョウ仲間に標本やその写真を見せたところ、「ここまで真っ黒なのは見たことがない」と驚かれた。そこで、鈴木さんとの連名で季刊誌「ゆずりは」の春号に報告した。
専門家「世界的にも珍しい」
チョウの生態に詳しい東京大…