東京電力福島第一原発事故の直後から、避難指示や廃炉の地元調整などを続けた経済産業省の官僚、木野正登さん(56)が1日付で仙台市の東北経済産業局に転勤した。1、2年で交代する官僚の世界で、福島で異例の14年勤務となった。国の立場で廃炉を進める一方、「原発回帰」の国の方針と距離を置いた。だが、新天地では一転し「推進」の側に立つことになった。
木野さんは2011年3月20日、関東経産局から、政府が県庁内に設置した原子力災害現地対策本部に移った。東大で原子力を専攻した経験が期待され、急きょの異動だった。
同本部で広報班長を担い、原子炉の最新の温度や周辺の放射線量、農産物の出荷制限などについて記者会見した。
避難者向けの説明会では厳しく責められた。「家が壊れていないのに仮設に住む気持ちが分かるか」「放射能が危なくないというなら、家族と一緒に福島に引っ越してみろ」。長年「日本の原発は安全」と言い続けた自分を恥じ、福島にとどまろうと考え始めた。
高濃度の汚染水が大量に漏れ…