東京電力が昨年、福島第一原発の作業員約5500人に労働環境についてアンケートをしたところ、作業時に放射線に対する不安があると答えた人が4割に上ったことがわかった。アンケートは毎年行い、不安がある人の割合は減少傾向だったが、前年から2.8倍に急増したという。
アンケートは、作業員の労働環境改善を目的に昨年9月から10月に実施。全作業員を対象に、休憩所の快適さや作業への不安、やりがいなどを尋ねるアンケート用紙を配り、5498人が回答した。回収率は94.5%だった。
福島第一原発での作業時に放射線に対する不安があるか尋ねたところ、「ある」(12.1%)と「多少ある」(28.2%)の合計は40.3%に上った。近年は不安が解消傾向にあったが、前年比で2.8倍に増えた。
「ある」「多少ある」と答えた人に、具体的にどんな不安があるのかを選択肢をあげて質問したところ、体に放射性物質が付着する「身体汚染」が52.2%と最も多く、前年よりも約7ポイント増えていた。
福島第一原発では2023年10月、多核種除去設備(ALPS(アルプス))の配管を洗浄中に高濃度の汚染廃液を浴びた作業員2人が入院。昨年2月には、汚染水の浄化設備がある建屋の排気口から汚染水約1.5トンが流出するトラブルが起きた。東電は、相次いだトラブルが作業員の不安を強めた可能性があるとみている。
福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表によると、作業経験が短い作業員が不安を感じている傾向があるという。小野氏は「建屋の中は放射線量が高く、汚染されやすい場所もあるが、しっかり対策をすれば安全に作業できる。そのことを伝えながら、不安を解消していきたい」と話した。