福田美蘭「森の掟」(2024年)=作家蔵
撮影:松野誠

 抽象と具象、無機と有機、静と動。岡本太郎が提唱した「対極主義」は、相反する要素を激しく対立させることで新たな局面を切りひらく思想だった。川崎市岡本太郎美術館で開催中の展覧会では、作風の異なる2人の現代美術家が、それぞれのアプローチで岡本太郎に向き合っている。

 画面上部で赤い歯車が旋回し、噴き上がる火花はネギの束と交錯する。岡本太郎の初期の傑作「重工業」、それを90度回転させて壁に掛けた福田美蘭さん(1963年生まれ)の同名作品は、元からこうだった気もするほど違和感がない。作品保全上タブーとされる展示方法にあえて挑むことで、美術館のあり方に揺さぶりをかける。

 歴史上の名画のタッチを時に忠実に再現し、その本質を再解釈する表現で知られる福田さん。背にファスナーのある赤い怪獣を描いた岡本の代表作「森の掟(おきて)」に着想した作品では、元ネタでは閉じているファスナーがあられもなく全開になり、中は地塗りのままの白が空虚に広がる。

 「無意味の中に、旧態依然と…

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