吉見純音さん ©NMB48

レッツ・スタディー!小論文編 吉見純音さん第2シリーズ①

 自分の考えを論理的な文章にする小論文。近年の大学入試では思考力や表現力がより重視され、小論文を学ぶ意義が改めて注目されています。NMB48メンバーによる小論文を河合塾の講師に添削してもらい、文章表現の要点を探ります。「小論文編」には再登場となる吉見純音さん(16)担当の1回目です。

(構成・阪本輝昭)

 記事の後半で、吉見純音さんのサイン色紙が抽選で3名様に当たる読者プレゼントの案内を掲載しています。

【お題】一番好きな硬貨は? 図柄に注目しつつ、その理由を

1円玉から500円玉まで、各種の硬貨

 1円玉、5円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉、どれが一番好きですか? 図柄に注目しつつ、好きな理由を答えてください。(200字以内)

【吉見純音さんの小論文】「私は硬貨の中で…」

 私は硬貨の中で一円玉が最も好きだ。表に描かれている「若木」には特定のモデルはなく、希望に溢(あふ)れ、伸びゆく姿を象徴しているそうだ。そして裏には「1」とひときわ大きく描かれている。「若木」のように、まだ何者でもない私。いつかはアイドル界のてっぺんを目指して、前だけを見て突き進んでいる私。このように一円玉には重なる部分が多数あり、私にとって一円玉は特別な硬貨である。焦らずにこれからも「若木」を楽しみたい。

【講評】隙のない構成、巧みな文章運び 感性のままもっと自由に

河合塾・加賀健司講師

 河合塾の小論文講師・加賀健司さんの講評です。

 一番好きな硬貨は1円玉、なるほどと思う文章運びです。構成もしっかりしており隙がない。最小単位の硬貨をあえて選んだところ、若木という絵柄と、駆け出しのアイドルである自分自身を重ねているところ。巧みです。非凡な才能が今回も発揮されています。

 今回、お金をお題にしたのは、新紙幣発行という最近のニュースに着想を得たものでした。紙幣や硬貨のように普段何げなく使っているもののデザインを改めてしげしげと見つめ直した際に、そこからどんな「発見」があるのか。あるいは「謎」が生まれるのか。そこを感じたままに書いてもらおうというのが出題の大きな狙いでした。出題の背景や意図を推理することは、小論文執筆のうえでとても有益です。

 これは言い換えると「硬貨を絵画作品に見立てて、一番好きな絵の感想文を書いて下さい」というお題でもありました。今回の小論文は「若木」の絵をみた吉見さんの感じ方というより、「若木」がもつ意味の説明に重点が置かれています。これはこれで高度な出来栄えなのですが、出題者としては「絵」そのものをみて吉見さんが何を思ったかをもっと知りたかったな、と。

 何ものでもない植物の絵など現実感が薄くて不気味だ、という感じ方があるかも知れません。U字にみえる枝ぶりが笑った口元のようで「ゆるキャラ」っぽくてかわいい、という感想もありうるでしょう。知識やデータではなく、吉見さんの感性によって読む人をはっとさせ、「そういう見方もあるか」という気づきを提供してくれると、さらに光る文章になると感じました。

 ただ、1円玉を選んだ着眼点と発想はやはり素晴らしいです。1円玉は「何ものでもない」がゆえに何ものにでもなれる無敵の硬貨だともいえますね。

 例えば2円や3円といった額面は1円玉でしかつくれない。そして1円玉につくり出せない金額はない。粘土のようにどんな形にもなる、無限の可能性をもったお金です。文章全体を通してそのあたりも浮かび上がってくると、より説得的になるかも知れませんね。

 しかし、もとより正解のあるお題ではありません。感性のまま、さらに伸び伸びと。2回目も期待しています!

【感想】硬貨の図柄、改めて見つめ直してみると(吉見純音さん)

吉見純音さん ©NMB48

 よしみ・あやね 2007年、兵庫県生まれ。高校2年生。愛称よしみん。昨年1月から活動しているNMB48の「9期生」。ピアノ、スケート、スキー、着付け、料理など特技多数。兼業農家をする祖父母の家で田植えや収穫の手伝いもする「農業アイドル」の一面も。

 2度目の登場ということで緊張しましたが、まずは褒めていただいて、本当にうれしいです。

 ふだんはキャッシュレス派ではなく、両親の意向で現金派です。なので毎日のように硬貨を使っていますし、なじみも深いはずなのですが、その図柄に注目したことはほとんどありませんでした。ですので、今回の小論文は、まずそれぞれの硬貨の図柄がどんなものなのかを改めて見返すことから始まりました。

 図柄をじっくり見比べる前に、まずネットで各硬貨の図柄の意味を調べ、「(若木が描かれた)1円玉こそ今の私にぴったりだ!」と思って書きました。いうまでもなく、硬貨としては最小の単位。まだ何者でもないし、だからこそ何者にもなりうる。そこに無限の可能性があるはずだという思いも込めていました。字数の関係で小論文には盛り込みきれませんでしたが、加賀先生がそのあたりもくみとってくださったようで、うれしいです。

 ただ、確かに、図柄自体の好みよりも「図柄の意味」の方に重きを置いたかも知れません。加賀先生のご指摘にはっとなりました。

 加賀先生の講評を受けて、改めて、自分が純粋に一番好きなデザインの硬貨はどれだろうと考えてみました。

実は、500円玉の図柄も好きです!

吉見純音さん ©NMB48

 実は、図柄だけでいうと500円玉のほうがもっと好きです。特に、2021年から使われている新500円はじっくり見てみると、なかなかすごいですね。

 桐(きり)の花模様の美しさはもちろんのこと、偽造防止のため模様や数字、硬貨の縁や側面などに微細な加工が施されているのも他の硬貨と違う特別感があります。まるで顕微鏡レベルと思えるような、こんな細かな彫り込みができる技術に感動を覚えます。

 その微細な加工がなされていることで、見る角度によって文字が浮かび上がったり消えたりする仕掛けになっており、見え方が変幻自在なのも手品みたいです。

 さらに、円の内側と外側で色が違うというのも不思議な感じです。これは、従来の500円玉と違って3つの金属素材を組み合わせてつくられているからだそうですね。

 こういう特別な硬貨がお財布の中に1枚あるだけで、気持ちが上がります。

 あれ。それって、私がなりたいアイドルの将来像に近いのかも。

 私は小さい頃から色んな習い事をさせてもらっていたおかげで、特技がたくさんあり、同時に興味・関心の幅も広いです。そうした部分を生かして、「私にしかなれない」アイドルになりたいという目標があります。

 その具体的な姿は、まだ自分にもはっきり見えてきていません。それができあがってくるのはまだまだ先のことになると思います。

 ですが、一人でいくつもの「顔」をもち、多くの世界があって、ファンの方一人ひとりにそれぞれ違った魅力を見せられるような存在にいずれなれたらいいな、ということは漠然とですが思っています。そして何より、アイドルとして、細部にまで丁寧に心を配った振る舞いやパフォーマンスをしていきたいというのも、ふだんから私自身が心がけていることでもあります。

 そうか、新500円玉で書く方法もありましたね!

「ゲルニカ」の複製画を見たときの思い出

吉見純音さん ©NMB48

 そういえば、私は小学5年生の頃、家族と美術館に出かけ、ピカソの「ゲルニカ」の複製画を原寸大サイズで見たことがあります。

 制作背景や、描かれているものの意味などを当時の私は詳しく理解していたわけではないのですが、とにかく、モノクロのその絵に大きく心を揺さぶられました。「説明」を超えた力を持つのが絵というものなのかも知れません。

 創作物に心を動かされたとき、何かに目を奪われたとき、それが自分の心に響いた理由というのがどこかに必ずあるはずだと思います。すぐにそれを言語化するのは難しいとしても、それを探すことで、ふだんあまり意識していないことや自分の中に眠っている何かを引き出すことができることもあるのかも知れないですね。

 今回も、まずは硬貨のデザインや絵を素直に見て、その絵をいいと感じた理由を自分の中でじっくり突き詰めていけばよかったなと思います。そういう順序で今回のお題に取り組んでみたら、また全く違った小論文が書けたのかもと思うと、小論文の面白さと奥深さに改めて気付かされる思いです。

 次も頑張ります! よろしくお願いします。

     ◇

【読者プレゼント企画】とけるかな?

吉見純音さん=大阪市中央区、有元愛美子撮影

 料理が得意だという吉見さん…

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