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100年をたどる旅 憲法編

連載「100年をたどる旅~未来のための近現代史」解説編

 第1次大戦から第2次大戦へ向かった「戦間期」から百年を、憲法を通じて振り返る。時代を象徴するキーワードとともに紹介する。

連載「100年をたどる旅~未来のための近現代史」

世界と日本の100年を振り返り、私たちの未来を考えます。
歴史を通して見えてくる「人」と「社会」。朝日新聞の企画
「100年をたどる旅~未来のための近現代史」です。

私擬憲法(1870~80年代)

 1870~80年代のはじめ、自由民権派の人々を中心に多くの憲法私案(私擬憲法)がつくられた。未確認のものも含めれば100を超えるとされる。植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」は徹底的な人権保障規定に特徴があり、抵抗権、革命権も認める。神奈川県五日市町(現東京都あきる野市)で教員の千葉卓三郎らが起草した「五日市憲法草案」は、1968年に旧家の土蔵から発見された。

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憲法をめぐる明治~昭和戦前期の動き

天皇機関説事件(1935年)

 天皇機関説とは、統治権は法人である国家にあり、天皇もその機関にすぎないという憲法学説。「国体に反する」として右翼や軍部の激しい攻撃を受け、東京帝大名誉教授の美濃部達吉・貴族院議員の著作が発禁処分になり、美濃部は公職から追放された。何が正しい学説かを時の権力が決めるという、「学問の自由」への介入で、立憲主義は息の根を止められ、日本は戦争への道を走っていった。

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帝国憲法下での動き(1930~45年)

平和主義と自衛隊(1954年~)

 自衛隊発足、日米安保条約改正、PKO法成立、自衛隊の海外派遣。戦争放棄と戦力不保持をうたう9条は常に論争の的だった。安倍晋三政権は2014年に憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定、翌年に安全保障法制を国会に提出した。多くの憲法学者は「違憲」と批判し、国会前では大規模デモも起きた。22年には敵基地攻撃能力の保有が認められ、専守防衛の原則が揺らいでいる。

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憲法をめぐる動き(1946~86年)

憲法改正をめぐる動き(1956年~)

 日本国憲法は米国の押しつけだとして、自民党政権は内閣の下に憲法調査会を発足させ、憲法改正を目指した。しかし、調査会が報告書をまとめた1964年ころには改憲の機運はしぼみ、池田勇人首相の下で、「軽武装・経済成長」路線を進んだ。近年では、安倍晋三首相が主導した9条への「自衛隊明記」などが改憲論議の焦点の一つになっている。

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憲法をめぐる動き(1991~2009年)

相次ぐ人権訴訟(近年)

 人権保障の面で裁判所の判断が近年、活性化している。同性婚が認められないのは憲法違反と訴えた訴訟をめぐり、大阪高裁が2025年3月、違憲判決を出し、高裁で5件の違憲判決が出そろった。旧優生保護法をめぐり22年に大阪高裁が国に初の賠償を命じ、24年に最高裁が「立法当時から違憲だった」と判決を出した。違憲審査権を裁判官がどう使うのか、注目されている。

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憲法をめぐる動き(2012年~現在)
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