自作の機体で予想通りの結果が出て、喜ぶ市川高校のメンバーら=2025年3月22日、茨城県つくば市、鈴木逸弘撮影

 初挑戦から9大会目。ようやくつかんだ全国の舞台は、市川高校(千葉県市川市)の生徒たちにとってほろ苦い結果に終わった。

 茨城県つくば市で3月23日まで3日間開催された「科学の甲子園 全国大会」。科学技術をはじめ、理科や数学など複数分野の知識を活用し、筆記と実技競技で総合力を競う大会だ。

 全国優勝の経験がある渋谷幕張高校(出場7回)や、準優勝したこともある東葛飾高校(同4回)といった伝統・強豪校を打ち破り、高校1年生主体の市川高校は県代表として初出場した。

 22日の実技競技。最後の三つ目の競技は事前に課題が公表されるため、生徒たちは準備してきた機材を使って競った。

 テーマは、フライホイール(はずみ車)。蓄えたエネルギーを使い、台車のような機体を平面で走行させるものだった。

 競技はまず「制御レース」を実施した。機体を斜面から降下させ、搭載したフライホイールにエネルギーを蓄積。斜面を下りきったところでこのエネルギーを使い、約2.1メートルの走行タイムを「目標タイム25秒間にいかに近づけて」走り抜けるかを競うものだった。次いで、障害物を乗り越えながら機体の積み荷を運ぶ競技が行われた。

 生徒たちは2月中旬に試作品を完成させた。制御レースの本番のコース条件を78パターン想定し、独自の物理計算式を用いて、フライホイールの大きさや重さ、ギア比などの準備をして臨んだ。

 本番では2回の競技機会が与えられたが、普段の練習コースと異なる環境などが微妙に影響し、いずれも規定の距離に届かず最低得点に。

 1回目の失敗から、完走することを優先させ、機体のブレーキを外したり、緩めに設定したりする選択もできたが、辻巻輝さん(1年)は「計算上いけるはずだった」とブレーキを外すなど極端な対応はせず、自分たちの研究を信じて戦った。

 フライホイールの競技は4人が参加するが、チーム8人全員の頭脳を結集。各生徒が数学や物理、プログラミングなど得意分野を生かして、自信の機体を作り上げた。

 事前に準備した機体は、アイデアやデザインが評価され「工作デザイン賞」に輝いた。

 障害物レースでは思い通りの結果を残したが、目標とした決勝レースには進めなかった。

 競技後、指導した本田豊也教諭(地学)は「自分たちの機体に自信があったから、(規定の25秒)ぎりぎりを攻めたかったんだろ? ブレーキを外していい結果が出ても、それは科学じゃない。これでよかったんだよ。また来年挑戦しよう!」とねぎらった。

 メンバー8人のうち7人が1年だった市川。主将の金森大成さん(高1)は「すべてをこの大会に賭けてきた。また来年、このメンバーで全国大会に戻ってきたい」と決意を表明した。

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