ソバの畑は2ヘクタールほど。出荷すると「出雲そば」に加工される=島根県出雲市

 快晴の朝、空に秋の気配を感じても日差しは強い。

 「きょうはソバの種まきを終わらせ、早生(わせ)のコメの稲刈りの続き。しばらくフル稼働の忙しさです」と、古参メンバーの陰山宗信さん(75)。事務所に集まった仲間と、その日の作業分担を確認する。

 各地から新米の便りが届いています。島根県出雲市の農事組合法人「トムTOMファーム」でも8月のお盆過ぎに早場米「つきあかり」の収穫を始めました。隣ではソバの種まきも。生産調整の要望に応えてきた取り組みを、作業の分散と経営安定に生かす。工夫を聞きました。

 大きさも形も様々な70枚の圃場(ほじょう)の合計は21ヘクタール。

トムTOMファームのどの圃場(ほじょう)で何を作るかを書き込んだ地図。「計画あってこそ」という

 壁に張った作付け計画の地図は品目で色分けされ、パッチワークのようだ。3品種のコメに加えて大麦、ハト麦、菜種、ソバ。農業経験の様々な組合員7人で、農機具をいかに効率的に動かすか。助成金を利用しつつ、全体で収益を上げるように計画が練られている。

 栽培するソバは県の育成品種「出雲の舞」だ。初夏に菜種の収穫を終えた圃場で作り、出荷先で地元名物の「出雲そば」になる。

転作作物として栽培するソバの畑は2ヘクタールほど。8月に種まきをする=島根県出雲市

 ただ、ソバは湿害に弱い。水田転作では、畝(うね)の間に排水溝を掘って水はけをよくする作業が必要だ。発芽後に雨が続くのも避けようと、天気予報を見て種まきのタイミングをはかる。

 ソバの種や肥料を、今年正式に仲間入りした星野博さん(67)が、トラクターのタンクに詰めていた。

 勤め上げた会社を定年退職してから農業の世界へ。手伝いでコメ作りを間近に見て、本腰を入れたくなった。「皆さんの手のひらが厚く、体の強いことに圧倒されて」。元の勤務先の社内報で報告すると、「まさか」と驚かれた。

 田んぼに近くの子どもたちが遊びに来る。契約先にコメを配達して喜ばれる。「コメだけ作っているのではなく、地域での役割があるとわかったことは大きいです」

 続いて早場米「つきあかり」の稲刈りだ。

 黄金色に染まった田んぼを…

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