Smiley face
写真・図版
園児に声をかける荒川ときさん=2025年6月5日午前10時8分、宮城県山元町つばめの杜、岸めぐみ撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 「しゅっぱーつ!」

 晴れ渡る空の下、1~2歳の子どもたちと大人が手をつないでお散歩に出かけた。ここは、戸建ての災害公営住宅(復興住宅)が並ぶ宮城県山元町・つばめの杜住宅。「なないろ保育園」は、復興住宅に入居する異色の保育園だ。

 散歩コース沿いの住宅に、きれいな花が咲く庭があった。「見せてくださーい」と職員が声をかけ、園児がお花に顔を寄せていると、この家に住む荒川ときさん(78)が出てきた。

 「かわいい服着てるね」。泣き出した子には「どうしたの?」。

 夫婦2人だけの暮らしでは、園児の声を聞くのが毎日の楽しみだ。ご近所とも「癒やされるよね」とよく話すという。

 保育園のすぐ近くに住む渡辺勲さん(80)は、ちょうど出かけるところだった。わざわざ車から降りて園児とハイタッチ。「子どもを見ると自然と笑顔になる。にぎやかになってよかった」と話した。

 つばめの杜は、沿岸部の被災集落が内陸に集団移転してできたまちだ。全346戸の復興住宅団地が完成したのは、2016年。もともと高齢の入居者が多く、やがて施設に入るなどして空き住戸が増えてゆく。その活用が課題になった。

 空いていた平屋の1軒を、町が事業者に紹介し、21年10月に「なないろ保育園」が開園した。今年5月末現在で、団地の高齢化率は56.7%。子どもとお年寄りがふれ合うことで、まちの活性化を図る狙いもあった。

「地域が明るくなった」

 開園前の住民説明会では「子どもの声がうるさいのでは」と反対意見も出た。今では「地域が明るくなった」という声が町に届く。

 想定外の効果もある。いつも…

共有