降り注ぐような日差しで目を覚まし、山を背に海をめざして歩けば、そこは温泉で有名な静岡県伊豆市土肥の中心部。特産市で買い求めた新鮮な野菜を調理して昼食とし、夜はこの土地ならではの味覚が楽しめる飲食店ののれんをくぐる。地元の人や観光客が入り交じって、ローカルな話に花が咲く。最近山で見た野生動物について、今年の「土肥桜」の見頃について――。
そんなリアルな伊豆市の暮らしを体験できるのが、市内に計3棟ある「お試し住宅」だ。都市部などからの移住を促すため市が2019年に始めたサービスで、2軒の長期利用(1~6カ月)の住宅は昨年11月から子育て世帯や若い夫婦の世帯に対象をしぼり募集している。期間中、1歳以上の子どもは一時預かり保育を活用し、こども園に入園することができる。
同市は伊豆半島の真ん中に位置する人口約2万8千人のまち。主要駅であるJR修善寺駅へは新幹線がとまる三島駅から伊豆箱根駿豆線に乗り、約40分。都心に比較的近い県東部に位置するものの、通いやすいとはいいがたい。それでも若い人たちを呼び込みたいという市で、移住の「いま」を取材するため、短期利用(7~15日)の住宅に10日間滞在させてもらった。
「子育て全力宣言」で若い世代をターゲットに
修善寺駅から西に車を走らせること約40分、土肥地区にあるお試し住宅の一軒家にたどり着いた。2階建ての3DKに冷蔵庫や洗濯機などの家電やキッチン用品は備え付けられていて、衛生用品をそろえればすぐに利用が始められる。こども園やスーパーまで徒歩10分の距離だ。
お試し住宅は中伊豆地区に1…