世界的な日本の漫画ブームで、原画の価値が見直されている。秋田県の横手市増田まんが美術財団は原画のアーカイブにいち早く取り組み、第29回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の特別賞を受賞した。49万枚の原画を収蔵する市増田まんが美術館を運営する財団の大石卓代表理事(55)に、原画保存の現状や課題を聞いた。
――国に先駆けて原画を保存してきた取り組みが評価されました
美術館の構想段階では、「釣りキチ三平」などで知られる地元の漫画家の矢口高雄さん(故人)の記念館をつくる案もありました。矢口さんからは「個人の記念館もありがたいが、子どもたちに一流の漫画家たちの原画を見せる美術館にしてはどうか。漫画家をめざす若者にも勉強になる」とのコンセプトの示唆をいただきました。
本格的に原画の保存に取り組み始めたのは2015年のころからです。19年に大規模リニューアルし、原画の保存を核とした美術館に生まれ変わりました。
――リニューアル後は収蔵のみならず、原画のアーカイブにも力を入れ、美術館ではガラス越しにその作業を公開しています
アーカイブは、とても手間がかかる作業です。まず単行本と原画を突き合わせて、紛失しているページがないかなどを確認。原画の汚れや枠外に書かれた情報などを1枚1枚、詳細に専用の台帳に入力していきます。
原画は高解像度のスキャナーでデジタルデータ化しますが、1枚スキャンするのに約10分かかります。紙の原画は劣化を防ぐため、1枚ずつ中性紙に挟んでまとめ、湿度や温度が厳重に管理された収蔵庫で保管しています。
単行本1巻分(約200枚)をアーカイブするのに数日を要します。美術館で収蔵する49万枚のうち、アーカイブが終わったのは約20万枚にとどまります。
海外の美術館から買い取りの相談
――なぜ原画が注目されるよ…