(通期展示)
京都の仁和寺が所蔵する国宝「宝相華迦陵頻伽蒔絵●そく(土へんに塞)冊子箱(ほうそうげかりょうびんがまきえそくさっしばこ)」(919年)は、第5回パリ万博(1900年)で展示され、この万博のために、日本で初めて西洋的方法論による日本美術史として編纂(へんさん)された「Histoire de l’Art du Japon」に掲載された作品だ。京都国立博物館(京都市東山区)で開催中の「日本、美のるつぼ」展で、目玉となる作品の一つとして展示されている。
真言宗の祖・空海(774~835)らが唐で書写して持ち帰った経典(三十帖(じょう)冊子)を納めるために、醍醐天皇(885~930)が作らせた。空海の没後、経典は散逸の危機にあり、醍醐天皇は経典を集めて新調したこの箱に入れ、東寺の経蔵に納めた。12世紀以降は仁和寺の所蔵となっている。
「美のるつぼ」展を担当した京博の永島明子・列品管理室長は「平安時代の蒔絵(まきえ)の作品は数が少なく、しかも制作の経緯や時期が明確。極めて貴重な作品です」と話す。
木製ではなく、麻布を漆で固めた乾漆製。漆器に金粉や銀粉を蒔(ま)いて模様を描く蒔絵は日本で独自に発展した加飾技法で、西洋に向けた日本美術史を飾るにふさわしい宝だ。
一方、空海の経を納めたこの…