「母親は助からないと分かっていた。子どもの命だけは何とかつなぎとめたいと思った」
パレスチナ自治区ガザ最南部ラファのクウェート病院で、医師アフマド・アブナキラさん(62)がそう話した。表情はない。
彼が、母親と子どもと呼ぶのは4月20日夜、この病院に運び込まれたサブリーン・サカニさんと彼女のおなかにいた子どもだった。
AP通信によると、サブリーンさんの自宅はこの日夜、イスラエル軍の空爆を受けた。爆撃2回でサブリーンさんと夫、4歳の娘ら少なくとも22人が死亡した。大半が子どもだったという。
ガザでの戦闘が始まって以来、この病院で働き詰めのアブナキラさんにとって、家族がイスラエル軍の攻撃で全員死亡した様子はめずらしい光景ではない。
ピンク色の衣類にくるまれたサブリーンさんの頭部のけがも手が施せるものではなかった。だが彼女が妊娠していることに気づき、決断した。
世界中でニュースになった出産の成功
すぐに手術を。
ただ、病院内は負傷者でいっ…