将棋の駒

 将棋の竜王戦の棋譜を利用した動画を許可なく配信されたとして、竜王戦を主催する読売新聞東京本社と日本将棋連盟がユーチューバーに損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。中島崇裁判長は被告の配信者に対し、読売新聞社へ841万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。

 竜王戦は、将棋の八大タイトルの一つ。判決によると、読売新聞社は竜王戦の実施に際して将棋連盟に契約金を払い、第三者の棋譜利用には利用許諾料などの支払いを求めていた。しかしこの配信者は、2022年と23年の第35、36期竜王戦の対局当日に、許可を得ずに153本の動画で棋譜を配信した。

 判決は、読売新聞社が竜王戦の開催に多額の費用を使い、棋譜を使って利益も得ていたことから、無断配信は「収益モデルが成り立たなくするおそれがある行為だ」と指摘。情報の価値が高い対局当日に無断配信され、営業活動に与えた不利益も大きいとして読売新聞社に損害が生じたと認めた。

 将棋連盟も配信者に賠償金の支払いを求めたが、読売新聞社からの契約金で収益を得ている点から「無断配信による損害が認められない」として退けた。

 読売新聞側は「新聞社と日本将棋連盟が長年にわたって作り上げてきた収益モデルの正当性を認めた意義のある判決だ」、将棋連盟は「今後も将棋文化の発展に一層努めていく」とコメントした。

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