「勝訴」の文字を掲げながら、その表情は曇っていた。東京高裁で先月あった鬼怒川水害訴訟の判決後、茨城県常総市の住民の多くは一審とほぼ同じ一部勝訴という結果に、満足していなかった。
判決は越水した同市若宮戸地区の砂丘を河川区域に指定せず、太陽光発電事業者の掘削を招いた国の対応に「瑕疵(かし)があった」と認めたが、決壊した下流側の上三坂地区については「改修計画に問題はない」とした。原告団共同代表の片倉一美さんは「若宮戸の誤りは誰が考えても明白で、上三坂の堤防を放置した責任こそ指摘してほしかった」と悔しがった。
10年前の大雨で、上三坂から流出した水は大規模浸水の原因となった。なぜ早く堤防を高くしなかったのか。片倉さんらは工事の工程を調べ、「安全性の評価に誤りがあった」と国の堤防整備のあり方に根本的な疑問を呈してきた。
専門知識がいる水害訴訟で住…