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写真・図版
グラフィック・小林省太

 企業などで不祥事が起きると、「第三者委員会」がしばしば設置されます。まるで年中行事のようにおなじみの光景ですが、こうした現状に警鐘を鳴らすのが、第三者委の調査報告書の「格付け」を長年手がけてきた会計学者の八田進二さん。フジテレビの第三者委が報告書をまとめるのを前に、第三者委がもてはやされる風潮の負の側面について聞きました。

 ――フジテレビの第三者委員会が、月内にも調査報告書を出します。ここまでの流れをどう見ていますか。

 「不祥事や不正が起きた場合に、第三者委員会を設置して原因を究明することを一律に否定するつもりはありません。ただ、昨今はあまりにも第三者委を立ち上げることが当然のような風潮になっている。これを深く懸念しています」

 ――どういうことですか。

 「本来、まずは企業がみずから率先してやるべきことを第三者委員会に丸投げし、隠れみのにするためのツールになってしまっているからです。経営陣の責任において事実関係や原因を徹底的に解明し、その結果に基づいて再発防止策を考える。それが自浄作用というものです」

 「にもかかわらず、今回のフジのケースでもそうですが、メディアなどから『第三者委員会を設置しないのか』と問い詰められることもあって、脊髄(せきずい)反射のように第三者委を設置することで責任を果たした気になっているのです。第三者委が調べるのを言い訳にして、自分たちできちんと調査や説明を行おうとしない。これは経営責任を放棄した本末転倒な状況です」

まず動くべきは誰なのか

 ――フジのように経営陣に対する信頼がすでに損なわれている局面においては、まずは社内で調べるといっても信用されないのではないでしょうか。

 「それはそうかもしれません…

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