硫黄島での日米合同の慰霊式に参列した中谷元防衛相(右)とヘグセス米国防長官=2025年3月29日午後0時44分、東京都小笠原村、代表撮影

 第2次トランプ米政権下では初となる中谷元・防衛相とヘグセス米国防長官による日米防衛相会談が30日午前、東京都内で行われた。中谷、ヘグセス両氏は前日29日には、太平洋戦争の激戦地・硫黄島を日米防衛相として初めてそろって訪問している。「戦後80年」の節目の年に、日米の現在地を示すことになるかもしれない会談で、注目すべき五つのポイントを考えてみる。

論点1.トランプ政権のアジア政策の立ち位置は?

 日米防衛相会談で、最大の焦点となるのは、トランプ米政権のアジア政策の立ち位置だ。

 バンス米副大統領は2月のミュンヘン安保会議で演説し、「欧州の脅威はロシアや中国ではなく、内部に存在する」と主張した。権威主義国家より、むしろ同盟国の欧州の指導者に矛先を向けた演説は、欧州に衝撃を与えた。米欧の亀裂が深刻化するなかで、トランプ政権がアジアの同盟国にどのようなアプローチをとるのかが、会談で注目される。

 「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」。ロシアによるウクライナへの国際法違反の武力侵攻に対し、当時の岸田文雄首相はこう危機感を訴えた。ロシアをまねて、中国も台湾に武力侵攻を試みるのではないかという懸念からだ。

 だが、いま、このセリフは別の文脈で語られる。トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談で顕在化したように、米国がロシアに接近する一方、ウクライナ支援に後ろ向き、かつ欧州の同盟国に冷淡な態度をとる姿をみて、東アジアでも、米国は同様の態度で臨むのではないかという疑念だ。

 25日にハワイを訪問したヘグセス国防長官は演説で「米国は中国の侵略を抑止するために同盟国・友好国と連携していく」とし、日本などアジア地域の同盟・友好国については「それぞれ独自の方法で抑止力を発揮していると信じている」と語り、バンス氏の示した欧州軽視とは異なり、アジア重視の姿勢を強調した。

 ただ、これが米政権を代表した方針なのか、確信できない。

 国防次官に指名されたエルブリッジ・コルビー氏は対中強硬派で知られるが、かねて「台湾は非常に価値があるが、米国にとって不可欠というわけではない」と主張。今月の議会公聴会でも、台湾の防衛費を総生産(GDP)比10%まで引き上げるべきだと、実現不可能な増額を要求した。トランプ氏も「台湾が半導体産業を米国から奪った」などと台湾を牽制(けんせい)する発言を繰り返しており、台湾内でも、米国の台湾防衛の本気度への懸念がくすぶっている。

 今回の日米防衛相会談では、台湾問題も含め、ヘグセス長官がアジア重視の姿勢をどう打ち出すかが注目される。

■論点2.日本の防衛費増や防…

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