Smiley face
フィリピン・バラバク島の西岸から望む南シナ海。桟橋で地元の子どもたちが遊んでいた=2024年3月23日、大部俊哉撮影

 見渡す限り続く白い砂浜。ライトブルーの海面を背に地元の子どもたちが水際で遊んでいた。

 この笑顔のすぐ先で、中国船がフィリピンの船に対してレーザー照射や放水銃の発射、衝突といった危険行為を繰り返す一触即発の事態が繰り返されている――。恐怖を肌で感じた。

【連載】米中対立の海 アジアのホットスポット

 中国の「脅威」を前に、米国を中心とした「中国包囲網」の構築がアジアで進んでいます。その最前線である南シナ海と台湾で、いま何が起きているのか。緊張の現場から記者が報告します。

 南シナ海に浮かぶ島々で構成されるフィリピン最西端のパラワン州。中国と領有権を争うスプラトリー(南沙)諸島を抱え、海洋進出の脅威と向き合う最前線の海域だ。州内にある離島の一つでいま、米軍の使用を想定した軍用施設の建設が静かに進んでいる。

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 4月には日米フィリピンが初の3カ国首脳会談を開き、安全保障協力を強めた。米比の間には相互防衛条約があり、バイデン米大統領は会談で、「南シナ海でフィリピンの航空機、船舶、軍隊が攻撃されれば、条約が発動することになる」と発言。米中の衝突が現実味を帯びるレベルまで緊張が高まっている。

マニラから飛行機と高速船で8時間 飛行場の建設現場へ

 米軍が関与を強める南シナ海の前線で、何が起きているのか。記者は3月下旬、パラワン州の離島、バラバク島に渡った。

 首都マニラから航空機と高速船を乗り継ぎ、計8時間。近海で中国船がフィリピン船に危険行為を続けるアユンギン礁から200キロあまり。民間人の住む島の中で「対立のホットスポット」に最も近い島の一つだ。

 森林に覆われた300平方キロメートルあまりの島で、わずかな平地に約6千人がひしめくように暮らす。主な営みは漁業で、海上に民家が立ち並ぶ。

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海辺でくつろぐ住民。船と波の音だけが響き、静かな時間が流れている=2024年3月22日、フィリピン・バラバク島、大部俊哉撮影

 南シナ海に面する西岸沿いの山中に飛行場の予定地がある。関係機関から特別に許可を得て、建設現場に入った。

記事後半では地元の人たちを訪ね、中国の影におびえながら暮らす生活や、軍事施設ができることへの思いを聞いています。

 森を切り開いた広大な敷地の…

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