Smiley face
「太陽の国」 メキシコが抱える闇 デザイン・小倉誼之

 3日未明。メキシコ大統領選で初当選を果たしたクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長(61)は、首都メキシコ市で開いた演説で、巨大なメキシコ国旗を背景にこう宣言した。

 「私は、メキシコ史上初の女性大統領になる」

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 約450キロ離れた西部ハリスコ州の州都グアダラハラにある自宅のテレビで、サンドラ・ラミレスさん(41)は複雑な思いで、その様子を見ていた。

 「女性大統領の誕生で、マチスモ(男性優位主義)が少しでも根絶されれば良いのですが。これ以上、犠牲者を出してほしくない」

 サンドラさんの長女イススさん(当時19)が殺害されたのは、2020年11月。女性であることを理由にした殺人、「フェミサイド」によるものだった。

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イベントに参加するイスス・ラミレスさん(中央)=母親のサンドラさん提供

 幼い頃から人助けを積極的にしていたというイススさんは、地元の大学の看護学科に進み、学業に励んでいた。

 20年6月ごろ、あるパーティーでイススさんが出会ったのが、サルバドール容疑者だった。2人はすぐに交際を始めた。

 普段は温厚なサルバドール容疑者に対し、サンドラさんは懸念を抱いていた。女性を自身の「占有物」として見るような発言が多かったのだ。

メキシコでフェミサイドが多い一つの理由が、マチスモ文化です。記事後半では、メキシコでいかにしてマチスモが広がったかなどを解説しています。

 「サルバドールはイススに対し、勉強をやめて家庭に入るよう求めていた。女性に勉強は不要で、家事をすれば良いという考えからだ」。サンドラさんはこう振り返る。

 学業を続ける意向を示してい…

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