吉田美希さん(39)は、「毒親」問題を扱う数少ない弁護士だ。
吉田さん自身、子どもを支配する親に苦しめられてきた。
3歳ごろの原体験がある。家の中で母の後ろをついて歩いていると、突然、「金魚のふんみたいについてこないで!」と怒られた。父に「遊んで」と言うと、忙しかったのか「邪魔だ」とベランダに締め出された。
小学生のとき、一輪車の練習中に転ぶと、親は娘よりも、ぶつかった柱に傷がつかなかったどうかを心配した。
いま思えば、2人とも「自分がどうしたいか」が優先で、「子どもがどう思うか」という視点が絶対的に欠けていた。
「暗闇が怖い」と泣くと「なんて弱虫なんだ」と馬鹿にされ、うれしいことがあって喜んでいると「調子に乗るんじゃない」とたしなめられた。感情を表すだけで怒られるため、いつしか自分の感情さえわからなくなった。
両親は教育熱心で「文系なら弁護士、理系なら医師になれ」と言われながら育った。それでも時には、反抗するときもあった。中学3年生になるまでは――。
学校でいじめに遭っていることを、勇気をふりしぼって相談した。だが、返ってきた言葉に耳を疑った。
「お前のせいだ」
その瞬間、心の中のすべてが崩壊した気がした。何を言っても、この人たちにはわかってもらえないんだ。以来、親から理不尽なことを言われても、言い返さなくなった。
削られる自己肯定感、心と体が悲鳴を上げた
「お前は価値がない」と否定…