住宅街の中にあるコンクリート張りの水路の、水がたまった場所。たも網を差し入れ、すーっと動かして引き上げると、鮮やかな青やオレンジの斑紋をつけた小さな魚が数十匹、ぴちぴちとはねた。
沖縄本島、中でも特に中南部の野外で高密度にみられる、野生化した「野良グッピー」だ。地元では「島グッピー」と呼ばれることもあるという。
訪れたのは沖縄でも気温が下がりつつあった12月頭だった。琉球大でグッピーやメダカなどについて研究する古川貴也さん(取材当時修士2年)は「8月ごろだとひとすくい80匹はとれます」と話した。
グッピーは南米原産の熱帯魚で、もともと沖縄にいる魚ではない。品種改良して室内で飼われていたものが逃がされるなどし、野生化したとみられる。
野良グッピーは、沖縄だけでなく、北海道から九州の温泉地の水路や、温排水が流れこむ川などでも定着。温かい温泉水が街中の水路に流れ込む大分県別府市では、少し濁りのある住宅地の側溝に網を差し込むと捕まった。
ヒトによってつくられた生きものが、本来いないはずの野外でじわりと広がっている。ヒトの管理下で飼われ、栽培されるはずだった故郷なきものたちが逃げ、時に放たれ、地域本来の自然を脅かしている。
国立環境研究所によると、グ…