日本勢19年ぶりの世界タイトルを獲得し、初の名人位奪取で史上4人目の「名人棋聖」となった。2024年に大きな飛躍を遂げた囲碁の一力遼四冠。数字への特殊能力を持つ才能が幼少時から注目されていた一方で、プロ棋士となってからは才能の壁にも直面した。悩んだ末に棋界の第一人者に上り詰めて自らの宿命も受け入れるように。一力四冠にその変化を聞いた。
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夢をかなえた、夢に向かう、夢を与える……。そんな東北にゆかりある人たちの活躍を、ロングインタビューでお届けします。
医師も驚いた特殊な才能
――突然ですが、1982年7月18日は何曜日ですか。
「今は、すぐには出てこないんですよね……。時間をかければたぶん出てきます。親が言うには、小さい頃はカレンダーを持ち歩くくらい好きでした」
――幼い頃の一力さんに囲碁を教えていた東北大病院の脳外科医・大沢伸一郎さんから、ある日付を言うとその曜日を瞬時に当てる特技があると聞いています。
「幼い頃はすぐに出てきました。あ、ちなみに、さっきの答えは日曜日ですか?」
――正解です。
「一応計算しました。カレンダーって曜日が七つで、うるう年が4年に1回なので、28年周期で循環します」
「なので1982年だと、28年後の2010年と同じになるんですね。たぶん昔は別のやり方でパッと曜日を出したのでしょうが、忘れました(笑)」
――大沢さんはまだ小学校に入る前の一力さんを見て、非常に処理能力が高い天才だと評しました。そう思いますか?
「いや全然そんなことはないです」
――しかしそんな特殊な才能があっても、プロでは挫折がありました。
「精神的にも結構しんどかったのが、特にタイトル戦で勝てない時期が続いた2017年から18年にかけてです」
大一番で結果が出ない、2年前に転機
――タイトルを独占する井山裕太さんに連敗していたときですね。敗因は何でしたか。
「内容的に勝てそうな試合を逆転されたことがあって切り替えられず、なかなか勝てない時期が続いてしまっていた感じでした。当時井山さんは国内では圧倒的な存在でしたので、『どんな碁でも勝つ』というオーラを感じてしまっていたのかもしれないです」
――どうやって活躍のきっかけをつかみましたか。
「2年前からメンタルトレー…