息を潜め、時間が過ぎるのをただ耐える日々だった。
男性(34)は昨年7月まで、関西地方の刑務所で2年10カ月ほどを過ごした。
初めて窃盗で逮捕され、執行猶予付きの判決を受けたのは28歳のときだった。仕事を転々とし、唯一の楽しみのパチンコに通う生活を送っていたが、金が底をついた。野宿生活を始めた矢先、パチンコ代ほしさに高齢女性のかばんをひったくった。
判決から1年8カ月後、今度はたばこ1箱を盗んだ。執行猶予取り消し。犯罪に手を染めた記憶は、万引きした10代半ばまでさかのぼる。
関西地方の刑務所では朝から夕方まで、洗濯ばさみの組み立てや、文房具のクリップの袋詰め作業をして過ごした。私語は許されない。ひたすら自由時間が来るのを待った。
ある日、職員と面接する機会があった。
生い立ちや入所前の生活状況など、簡単な質問に答え、積み木を使ったパズルをした。その後、診断書のような紙を渡され、こう告げられたという。
知的障害がある――。
小さい頃から勉強が苦手だった。学校は苦痛で、引きこもりがちでもあった。「何となく分かっていた」
ただ、その後も、塀の中での生活に変化はなかった。
懲役と禁錮をなくし、新たに「拘禁刑」を創設する改正刑法が6月1日、施行されました。「懲らしめ」から「立ち直り」に軸足を移す刑事政策の一大転換。その意義や課題を考える連載を始めます。
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