忘れられた紛争 スーダンの現場から

 救っても救っても、目の前で命が消えていった。

 砲撃で顔の左半分を失った女性。血があふれ出す腹を両手で押さえてきた男性。頭を負傷した男性は、手術のために髪をそっている途中で息を引き取った。

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 8月下旬、アフリカ北東部スーダン東部の港町ポートスーダンの避難民キャンプで、看護師のバドリア・ヤシンさん(24)は、戦地の首都ハルツーム郊外の病院でのできごとを語った。「私は、なぜこんなにも無力なのでしょうか」

 昨年4月に始まった国軍と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の主導権争いを発端とする紛争は、1年半が過ぎても終わる兆しが見えない。

 国連によると、紛争で少なくとも2万人が犠牲になったとみられる。一方、米ニューヨーク・タイムズなどによると、スーダン担当の米特使は15万人が犠牲になったという見立てを示している。戦線が拡大し、政府や国際機関も死者数を把握するのが困難な状況だ。

 人口約5千万人のスーダンで、国外に逃れた人は238万人、国内避難民は1089万人に達し、世界最大の避難民を生み出す危機となっている。だが、ウクライナや中東の戦争の陰に隠れ、「忘れられた紛争」と言われる。

戦場の最前線の病院で、救命活動にあたってきたヤシンさん。流血し泣き叫ぶ患者たちの中に見つけたのは、父の姿だった。

「私はいいから」と言った父

 ヤシンさんは、ハルツームと…

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