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数学の問題に挑む(本文と写真は関係ありません)
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 「今年で4年目となる大学入学共通テストが全国一斉に始まりました」

 西日本の20代の女性会社員は1月、耳に入ったテレビのニュースに、チャンネルを変えた。

 IT系の「ホワイト企業」で働いている。窓から夜景が見えるゆったりとしたワンルームマンションでの暮らしは気に入っている。2カ月に1度は、仕事帰りに好きなアーティストのライブに行く楽しみもある。

 それでも埋まらない空しさがある。10年近く前の、大学受験のことだ。

 女性の第1志望は、自宅から電車で2時間の、県外にある関西の難関私立大だった。

 小学生のころ、テレビで女性アナウンサーの出身校として紹介されているのを見て、「賢い学校なんだな」と思ったのが、きっかけだったように思う。

 中学で歴史の勉強に興味を持ち、歴史研究も名高いその大学の文学部で学びたいと思った。高校では、「大学院まで勉強して、研究者になりたい」という目標ができた。没頭した先にどんな景色が見えるのか、知りたかった。

 2年生になると1人でオープンキャンパスに行き、体験授業を受けた。持ち帰ったパンフレットを見ていると、授業名を眺めるだけでワクワクした。

 受験勉強は、眠気覚ましのコーヒーを片手に午後11時ごろまで塾の自習室にこもった。参考書に、間違えがちな点や気づいたことを書き込んだ。表紙はボロボロ、メモやマーカーの印や付箋(ふせん)でいっぱいになった。

 旧大学入試センター試験は20年分以上を収録した分厚い過去問を2周分解いた。志望校の過去問も、数年分を3周程度。めいっぱいの量をこなした。

「一人暮らしは絶対にダメ」

 迎えた受験。併願校選びで母からは「一人暮らしは絶対にダメ」と言われた。自宅から通える学校の中から、両親の勧めで「安全圏」の私大1校を決めた。

 センター試験の成績を利用して、その1校に合格した。第1志望の合格発表。オンラインで見た画面には「不合格」とあった。

 同時に開示された得点を見ると、合格ラインまで数点差だった。

 「行きたい大学で学びたい。もう1年、やりたい」

 リビングで両親に土下座し、涙ながらに頼んだ。

 だが、母にはこう言われた。

女性の大学進学率は5割を超えましたが、性別が「壁」となって思うような進学を果たせない人たちもいます。なぜなのでしょうか。どんな背景があるのでしょうか。当事者らの声を聞き、5回の連載で考えます。

 「女の子の若い時間をムダに…

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