「征(ゆ)け、戦力の大飛躍」。1943年10月15日の朝日新聞夕刊は、そんな見出しで早稲田大学、法政大学の学徒出陣壮行会を取り上げている。太平洋戦争中の43年、政府は大学生や専門学校生などの徴兵猶予を、理系学生など一部を除いて廃止し、学生たちを戦地へ送った。その数は10万人とも言われるが、今も総数はわかっていない。
記事には、列になって歩く法政大の学生たちの写真が添えられている。大学の壮行会を終えた後、学生たちが皇居外苑を行進したという。背景には、楠木正成像が写り込んでいる。
学徒出陣から47年経った90年3月の卒業式では、自らも学徒出陣を経験した当時の阿利莫二(ありばくじ)・法政大学総長が、同様に出征して亡くなった学生の卒業を認め、遺族に卒業証を手渡した。90年と91年、2度の卒業式で計44人の遺族に卒業証が渡されたが、当時の調査では出陣学徒の数などはわからなかったという。
阿利総長は学徒出陣50年にあたる93年、当時の大学が生徒を歓呼の声で送り出したことについて反省する共同声明を発表するよう働きかけ、12月1日、全国の272の私立大学の総長・学長が「学業を志した有為の若人たちを過酷な運命にゆだねるほかなかったことに、深い胸の痛みを覚える」とする共同声明を発表した。
太平洋戦争の終結から80年。朝日新聞に残る、戦前から戦後の写真の撮影地を訪ね、現代の風景の中で戦火の残像を探しました。戦火の時代を生きた人々と現代の人々のつながりを表現するため、当時と現在、2枚の写真を合成し紹介します。
記事の後半で、現在の写真の中に当時の風景が浮かび上がる動画をご覧いただけます。
学徒出陣者3395人、戦没者694人
法政大学は、学徒出陣から7…