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日本在住ベトナム人らのサッカー大会「FAVIJA CUP」でボールを奪い合う選手ら=2024年4月7日、さいたま市桜区、内田光撮影

 「モ・ハイ・バー!(1、2、3)」。ユニホーム姿の若者たちが円陣を組んで、気勢を上げた。4月上旬、さいたま市西部を流れる荒川の河川敷グラウンドであったベトナム人らのサッカー大会「FAVIJA KANTO CUP 2024」のキックオフだ。

 集まったのは関東地区に住む留学生や技能実習生、特定技能などの在留資格で働く在日ベトナム人ら約1500人。日差しが照りつけ汗ばむ陽気のなか、職場の仲間や同郷者でつくった40チームが賞金と全国大会への切符をかけて競い合った。

 ピッチ際を大勢の観客が囲み、目の前で繰り広げられるプレーに声援が飛ぶ。ベトナムの音楽が流れ、ダンスを楽しむ若者もいるなど、会場は小さなベトナムといった雰囲気だ。

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ピッチ際ぎりぎりに並んで観戦するベトナム人たち。選手たちとの距離が近く、応援にも熱が入る=2024年4月7日、さいたま市桜区、内田光撮影

 神奈川県内のチーズ製造工場で、特定技能の在留資格で働くグエン・バン・クアンさん(28)は「日本での生活は大変だけど、週末にサッカーをすると元気になります」。

 特徴的なのは、プレーの激しさだ。

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サッカーの試合前に、円陣を組んで気勢を上げるベトナム人ら。働いている会社や、出身地などでチームをつくり大会に参加している=2024年4月7日、さいたま市桜区、内田光撮影

 大会の審判委員長で、蕨市サッカー協会(埼玉県)の吉村靖幸さん(57)は「日本人にはないハングリーさがある」と驚く。

 勝負にこだわる余り反則も多く、以前は試合中に殴り合いのけんかもあったという。ケガをされては困ると、レッドカードは5千円、イエローカードは2千円を徴収するという独自ルールが生まれた。罰金は運営費に充てているという。

 審判員の田中寿雄さん(62)も「中はベトナムで、外は日本。この線の内外で二つの国を行き来している感じ」と話す。

 独特なルールは、ピッチ外にも存在する。

 一つは、大会参加には在留カ…

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