居酒屋「mebuki」を開業し、カウンターに座った客と会話を楽しみながら料理を提供する池端隼也さん(中央)=2024年7月1日午後5時44分、石川県輪島市、金居達朗撮影
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 能登半島地震から半年の1日、石川県輪島市のシェフ池端隼也(としや)さん(44)が地元の料理人仲間とともに居酒屋「mebuki」を開いた。ミシュラン一つ星を獲得した自身のフランス料理店は全壊したが、「悔しさ」を胸に挑戦を続けている。

 「すごくおいしい。地震後、輪島沖のお魚を食べるのは初めて。今日は特別な日。輪島の人は輪島のお魚を食べて生きてきましたから」

 来店した男性(50)がヒラマサとマダイの刺し身に笑顔をみせると、池端さんも目を細めた。

 「やっと復興が始まった感じ。感無量です。寒い中、炊き出しをしていた1月から6カ月。思い返すとうるうるしてきそう。6カ月、1日1日が濃かった」

 地元の輪島港は海底が隆起して漁に出られなくなるなど、被災地での食材の調達はまだ難しい。それでも地元の旬の食材を使った料理を出したいと、厨房(ちゅうぼう)に立つ料理人の一人、河上美知男さん(64)が自ら釣った。他にも太刀魚の香草焼き、鱧(はも)のなべなど、能登産の食材を使った料理が並ぶ。太刀魚と鱧は、再開した石川県能登町の宇出津港で水揚げされたものだ。

 食材確保の難しさから当面はメニューをコース2種類のみとし、予約の人数も1日20人に限定している。8月からメニューを拡大して本格化させる。

 輪島市で生まれた池端さんは、大阪市の専門学校でフランス料理の基礎を学び、市内の名店で修業。26歳で単身フランスに渡り、ブルゴーニュ地方やパリの星つきの名店で本場の技術を学んだ。

 帰国後、当初は大阪市での出店を計画した。だが、半年間ほど輪島市に里帰りした際に、近所の人に頼まれて仕出し用の料理をするうちに輪島の食材の魅力に気づいた。

能登の食材ふんだん ミシュランの星も獲得したが

 「フランスでは田舎町でも地…

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