AI(人工知能)開発のオルツ(東京都港区)が8月31日、東京証券取引所グロース市場を上場廃止となった。昨年末までに計上した売り上げの大部分を占める119億円が、循環取引による「架空計上」だった。一般投資家にも多額の損失を与えた不正は、なぜ見過ごされたのか。
複数の広告会社あてにこんなメールが届いたのは、2021年2月ごろのことだ。
「米倉いわく、たとえば1億円の売り上げ成果が出るのなら、1億円近くの広告費用をかけてもよいというスタンスです」
差出人はオルツの営業担当者。「米倉」とは創業社長の米倉千貴(かずたか)(48)を指す。
このメールもきっかけに、オルツは広告会社などとタッグを組み、自ら支出した広告費などを自社に還流させ、売り上げがあるかのように装う工作を仕掛けていく。
監査法人、ベンチャーキャピタル(VC)、証券会社や東証にもウソの情報を流し、昨年10月に上場を果たして一般投資家からも資金を集めた。メディアにもたびたび登場してもてはやされた「大型AIベンチャー」は、壮大なフィクションだったのか。
実態をともなわない数字や施策で投資マネーを吸い上げたオルツとREVOLUTION。2社の第三者委員会の調査報告をもとに、株式市場の病巣と課題を探ります
愛知大時代に携帯販売のバイト
オルツは14年、「パーソナ…