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【動画】マツタケの名産地として知られる中国・雲南省迪慶チベット族自治州の香格里拉=小早川遥平、余苗苗撮影

 「松茸刺身」

 昨年の夏休み、食堂のメニューに載る漢字4文字に目を奪われた。

 場所は、中国雲南省の北端「シャングリラ」。漢字で香格里拉。標高3276メートル、雄大な自然が小説に登場する理想郷のモデルになったと、地方政府が2002年にこの名に改称し、旅人たちの目的地になっている。

 思わず、注文した。運ばれてきたのは、皿いっぱいにスライスされたマツタケとワサビじょうゆ。名前は、日本語の刺し身からきているらしい。

一皿から見える世界(7)

日本の食卓は、世界とつながっています。世界各地で取材する特派員が、食材にまつわる物語を追いかけます。後半には食材のメモもあります。

 「生のままでもいけるし、火鍋に入れてもおいしい」と店員。口に運ぶと、サラダで食べる生のマッシュルームのようなシャキシャキとした食感だ。日本でご飯と一緒に炊いたときの香ばしさに加え、生ならではの独特の甘みがある。

 小ぶりのマツタケが5~6本で88元(約1900円)。刺し身は一帯でマツタケが採れる7~9月だけ味わえる。この秘境で食べる特別感が味を一層引き立てる。

 貿易統計によると、22年に日本が輸入したマツタケの約64%は中国産だ。その中国産の4分の1以上を占める香格里拉のマツタケがより新鮮な状態で日本でも食べられるようになる――。情報を耳にし、12月に再び現地に飛んだ。

 「世界松茸第一村」。中心部…

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