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海岸の崖下に転がるトーチカ。初めは土中につくられたが、80年の間に波や地震などの影響で崖が崩れ、姿を現したとみられている=2025年5月26日午後4時12分、北海道根室市、ドローンで内田光撮影

 本土の最東端に位置する北海道根室市。約12キロの砂浜が続く落石海岸・三里浜の中ほどに、コンクリート造りの人工物が横倒しになって、崩れている。敵を監視、攻撃するための「銃眼」を備えた小型の防御陣地「トーチカ」だ。

 太平洋戦争末期、千島列島方面から米軍が侵攻してくることを恐れ、道東の沿岸部を中心に多くのトーチカが築かれた。戦争の記憶を今に伝える貴重な「歴史の語り部」だが、それらは文化財としての保護対象にはなっていない。大半が長い年月の中で劣化したり、開発で取り壊されたりして、ひっそりと失われつつある。

 そんなトーチカに興味を持ち、約30年前から調査してきたのが帯広市の建築家・小野寺一彦さん(67)だ。

 当時はまだインターネットも普及していない時代。地元の海岸に点在する大きな「石の箱」が戦争に関係するものだとは聞いていたが、それ以上のことは周囲に聞いても何もわからなかった。

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旭浜にあるトーチカの銃眼から外をのぞく小野寺一彦さん。コンクリートの厚さは2.5メートル。銃撃の角度を広く確保する一方で、敵からの跳弾が中に入るのを防ぐため、階段状の設計になっているという=2025年5月24日午前10時33分、北海道大樹町、内田光撮影

 「他の場所にももっとあるんじゃないか」。地図を片手に大樹町の海岸を歩き回り、トーチカ探しを続けた。

公開できなかった調査報告書

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