男性更年期障害について「夫婦がともに知ることで、過ごしやすくなるんじゃないか」と女性は話す(写真は本文とは関係ありません)=Peak River/stock.adobe.com

 「まじめで一生懸命。でも、そのせいで負担を抱えすぎてしまったのかも」。四国に住む50代の妻は、同い年の夫についてそう話す。

 夫とは大学時代に関西で知り合った。付き合いはじめると、2人で過ごす時間が心地よく、28歳で結婚。やがて四国での同居を始めた。夫は公務員、妻は専業主婦に。2人の子どもに恵まれた。

 「優しすぎる」性格の夫は、人になにかを強いることがほとんどなかった。年末年始やお盆の時期も、妻を気遣って自分の実家に呼ぼうとはしなかった。たまにケンカすることこそあれ、大もめすることもなく、「夫婦関係に問題はない」と思っていた。

 試練は、夫が30代半ばになった頃にやってきた。

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 夫の手足がこわばる症状が出るようになり、その後、難病とわかった。薬が効いている間は最低限の日常生活は送れるが、活発には身体を動かせず、車の運転もできなくなった。「家族のために役に立てていない」という自責の念にかられているようだった。

 そして、2020年のコロナ禍のころ。夫に「異変」が見えはじめた。

「これまでなかった」夫の行動

 まず夫の職場の環境に変化があった。持病への理解がある同僚が退職し、人間関係がうまくいかなくなった。その後、慣れない部署へ異動になった。

 親子関係もきしみはじめた。

 コロナ禍で高校が休校となり、息子が荒れはじめた。妻との親子げんかが絶えなくった。

 ある日、妻と息子が口論をしているさなかに、夫が仲裁に入ってきた。しかし2人は、夫を無視して口論をやめない。すると夫は「やめろー!」と、体当たりするように妻を「ドンッ」とつきとばした。

 「こんなことするんや」。これまで一度もなかった夫の行動に、妻は驚き、ぼうぜんとなった。子どもたちも、父が初めて手を出した様子にショックを受けていたという。

 異変は、ほかにもあった。

 たとえば、家具の組み立て…

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