九州の南、奄美大島と沖縄の間に浮かぶ鹿児島・沖永良部(おきのえらぶ)島はサンゴ礁が隆起してできた南国の島だ。

 1周60キロほど。真っ青な海と白い砂浜が、鮮やかなコントラストを描き出す。地下には200~300もの大鍾乳洞がある。

 東京から1400キロ離れたこの島に、太(ふとり)悠子さん(47)が移住したのは2019年、40歳の時だった。

 「引っ越してすぐに思いもよらなかったことが次々に起きた。人生が180度変わりました」

双子の子を抱っこする太悠子さん(左)と夫の剛志さん。沖永良部島に移住後に結婚し、家族が増えた=2025年4月2日、鹿児島県和泊町仁志、吉沢龍彦撮影
太悠子さんの移住ルート

 移住からわずか半年で、島でめぐりあった男性と結婚した。「妊活」を経て4年後に双子が生まれ、いっぺんに2人の子宝に恵まれた。奄美大島にも2年間住み、フラワーショップを営む体験もできた。

 出身は北海道。大阪で20代を過ごし、30代になって東京に移った。旅行会社に勤め、仕事とプライベートで約50カ国を旅した。特にスペインが好きで短期の留学をしたこともあった。

 元気いっぱいの暮らしぶりだったが、30代後半、アラフォーにさしかかったころから、心の陰りも感じるようになった。

連載 地方に引っ越してみました

沖永良部島と東京の一番の違いは「人間関係の近さ」と感じる太さん。記事の後半では島の暮らを映す写真とともに、「不安もありましたが心配してもきりがない」と移住を決意した太さんが、地方に自分の居場所を見つけるために大切だと思うことを語ります。

 「このまま東京で1人で過ごしていくのかなって。例えば、マンションを買って、会社でずっと働いて定年を迎えるのかなと」

 そのころランニングが趣味だ…

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