北朝鮮インサイト⑭
北朝鮮は、8月末まで続いた、朝鮮半島有事を想定した米韓の合同軍事演習に強く反発しています。そんななか、北朝鮮国内では「異変」が起きています。今春には実施されるはずだった最高人民会議の代議員の選挙がいまだに実施されていないのです。最高人民会議は国会に相当すると言われる立法府。いったい何が起きているのか。公安調査庁で長年にわたり北朝鮮問題を分析してきた坂井隆さんは「選挙を実施しないのではなく、できない。重大な問題だ」と指摘します。
【連載】北朝鮮インサイト
核・ミサイル開発に邁進し、日本にとってやっかいな隣国・北朝鮮。この国は実際どうなっているのか。40年以上にわたり、北朝鮮を分析してきた元公安調査庁職員による、プロフェッショナルの見方をお届けします。
〈箱田〉北朝鮮憲法は「最高人民会議の任期は5年」としています。前回は2019年3月に選挙が実施されたので、もう5年を半年も過ぎていますね。
〈坂井〉北朝鮮憲法は「やむを得ない事情で選挙を実施できない場合は、選挙が実施されるまで任期を延長する」としており、ただちに違憲状態とは言えません。しかし今春、選挙ができないほどの事情があったとは考えにくいですね。
北朝鮮ウォッチャー 坂井隆さん
さかい・たかし 1951年生まれ。78年に公安調査庁に入庁し、ひたすら北朝鮮をウォッチし続けてきた。2012年に退官後も独自に分析を進め、その手腕は専門家らの間でも高い評価を得ている。共著に「独裁国家・北朝鮮の実像」(17年、朝日新聞出版)など。
〈箱田〉最高人民会議は「国会に相当する」と表現されますが、独裁国家の北朝鮮において実際はどういう役割があるのですか。
〈坂井〉北朝鮮においても最高…