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ホテル東洋に長期滞在しているケバン・ケネディさん。宿泊客のメッセージであふれる共用スペースの扉に、自らは「ALL POWER TO THE WORKERS(すべての力を労働者に)」と書いた=2024年4月26日、大阪市西成区太子1丁目、市原研吾撮影

 日雇い労働者のまち、大阪市西成区の釜ケ崎にあるホテル東洋(5階建て120室)の宿泊客は年間4万人弱を数える。その8割が海外の旅行者だ。

 釜ケ崎かいわいの宿舎が海外のバックパッカーに目を向けたのは20年ほど前。ホテル東洋は、その先駆けと言われる。

 一番安いエアコンなしの3畳間で1泊1900円。中国や韓国からの客が多いが、フランス語圏やスペイン語圏の人も目立つ。

 あまり予定を立てず、1週間弱泊まる人が多い。月単位の滞在も1割ほどいる。

 1972年創業。もともとは日雇い労働者向けの簡易宿所だった。運営会社の浅田裕広(やすひろ)社長(47)は、20年ほど前に祖母から経営を引き継いだ2代目だ。

 日雇い労働者が高齢化し、人数も目に見えて減った。生活保護受給者向けのアパートにくら替えする簡易宿所が相次いだ。東洋の稼働率も2~3割まで落ち込んだ。

 トイレや洗面所は共用で、エアコンもエレベーターもない。宿泊費がいくら安くても、日本人で埋めるのは難しい。海外客の獲得に生き残りをかけ、周辺の簡易宿所の経営者たちと話し合いを重ねた。

 海外の旅行者向けサイト「ホステルワールド」などに案内を出した。浅田さんは、大学時代にタイ旅行で1カ月、バンコクのバックパッカー通り「カオサン」で過ごした。その時のワクワク感を、訪日客にも味わってほしかった。

当初は月に1、2人 起死回生の策は……

 しかし、海外からの客はなかなか増えなかった。当初は月に1、2人がやっとだった。

 トイレを和式から洋式に換え…

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