博士号の学位記を手にする中野汐里さん

 神奈川県の中学校教師だった中野汐里さん(71)は、かつて憧れた大学院に49歳で入学しました。親の介護をしながら、博士課程にも進学。「なんの役に立つの?」という冷ややかな反応もありましたが、「アラ還」で博士号を取得しました。人生の後半に新たな意味が与えられたといいます。

 「学生に戻れるのがとにかくうれしくて。見るもの聞くものすべてが面白かった」

 中野さんは、早稲田大大学院・教育学研究科に入学した2003年をそう振り返る。息子と同年代の学生とともに、桜の咲く早稲田キャンパスの門をくぐった。

 大学院、なかでも早大は、10代からの憧れだった。

 関西で生まれ育ち、早大の自由な校風にひかれたが、一人暮らしを許してもらえず受験を断念。自宅近くの大学に進んで英文学を専攻した。

 教育実習で教員の魅力に気付き、卒業後は公立中学の英語教師に。結婚し、20代で2人の子を出産。夫婦共働きで仕事を続けた。

 教員の仕事にやりがいは感じていたが、長年続けていると、だんだん自分の「知識不足」を感じるようになってきた。

 「大学時代は英文を読むばかりで、スピーキングはぜんぜん学んでいませんでした。こんな自分が英語を教えていていいのかなって。教育学も、教員免許をとるための最低限の授業しか受けておらず、教え方も我流でした」

 学び直しの機会をうかがっていたものの、日々の仕事に追われ、なかなか一歩を踏み出せないでいた。

 退職を決断したのは48歳のときだった。

■家族に内緒で受けた試験…

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