関東地方に住む30代のみきさんは、母親に「しつけってどうしたらいい?」と聞いた。子どもが生後半年の時だ。
母はこう言った。
「ムチしたら、いい子になるわよ」
母はキリスト教系新宗教の信者。この教団の複数の信者によると、「ムチ」とは素手やベルトなどでたたくことを意味するという。
「こんなに小さい子に?」。みきさんはそう思ったが、気がつけば、おしりを手でたたいていた。
泣いて逃げる子どもを追いかけ、「虐待をしているかもしれない」と思ったこともあったという。それでも、ムチ打ちは正しいと思っていた。自分もされてきたからだ。
親の信仰によって生きづらさを抱える「宗教2世」の問題は、2022年の安倍晋三元首相銃撃事件以降、注目されました。宗教を背景にした虐待は、2世にとどまらず、次の世代にも影響が及ぶ可能性があります。「虐待の連鎖」を断つために、何が必要でしょうか。
- 【関連の記事】「神の子」と呼ばれた2世
母はみきさんが3歳の時に入信した。自分が言うことを聞かないと、母はたいていムチ打ちをした。下着を脱いで両手を壁につくように言い、おしりをたたいた。叫び声が漏れないように、口にタオルを入れることもあったという。
みきさんは母に嫌われたくなかった。「愛されているから、ムチ打ちされるんだ」と思い込むようにして、抵抗しなかった。
■「愛されているから、ムチ打…