新しい飼い主を探してほしいとケアマネジャーから依頼があったシバイヌ。飼い主は一人暮らしの高齢者で、認知症の症状が進んだという=人と動物の共生センター提供
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 「高齢者に施設に入居してもらいたいが、『犬を置いていけない』と言っている。新しい飼い主を探してもらえないだろうか」

 認定NPO法人「人と動物の共生センター」(岐阜市)が運営する「動物相談ホットライン」に、そんな相談があった。

 飼い主を支援する介護保険のケアマネジャーからだった。今年2月のことだ。

 飼い主は一人暮らしの80代男性だった。室内飼いのシバイヌと暮らす。認知症の症状が進んで金銭管理などができなくなり、一人暮らしが難しくなった、という。

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 ホットラインの支援スタッフ鈴木恵美子さんが、この飼い主に関して相談を受けたのは、実は2回目だった。

 前回は、男性が足を骨折して入院していた約1カ月間、定期的に家を訪問し、犬の世話を担った。

 今回は、本人の意向を確認したうえで飼い主募集のチラシをつくった。SNSや動物愛護関係者のルートを通じて呼びかけ、引き取り先探しに協力した。

 同センターが動物相談ホットラインを立ち上げたのは2022年8月だった。

 それ以前から、介護保険関係者や生活困窮者を支援する行政職員、高齢者の家族などから、ペットについての相談が寄せられていた。入院・入所時のペット対応や、猫が何十匹にも増えてしまう「多頭飼育崩壊」などに直面し、「なんとかできないか」と援助を求める声が多かった。

 切迫した状況になる前に、できるだけ早く飼い主やペットと接点を持てれば、支援しやすくなる。それがホットライン開設の狙いだった。

 相談は増え続けている。2024年3月までに新規相談は約270件、飼い主宅への訪問対応は延べ約440件に達している。

 高齢な飼い主の要介護や認知症だけでなく、現役世代も含めた経済的困窮や孤立といった課題も浮き彫りになる。

 ペットのフード代を捻出するために、自らの食費を切り詰めている人も少なくないという。フード代や一時預かりなどの費用は飼い主に請求するのが原則だが、現実には支払いが難しい場合も少なくない。

 「日々葛藤しながら支援に関わっています」と鈴木さんは言う。

 公的な補助はなく、鈴木さんら専従スタッフの人件費はNPOの持ち出しだ。活動は寄付や助成金が頼みの綱となっている。

 同センターは2022年、岐阜市内の地域包括支援センター19カ所の職員に、高齢者や生活困窮者のペット飼育についてアンケートをした。

 回答があった18センター・…

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