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 この日の海は、いつにも増して透明度が高かった。青緑の水面に陽光が降り注ぎ、海底の白砂に波の影を落としていた。

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夏休みの家族連れやカップルで混み合う水晶浜海水浴場=2024年8月16日、福井県美浜町、乗京真知撮影

 お盆期間の8月14日、私は水晶浜海水浴場(福井県美浜町)を訪れた。ここ数年、福井県沿岸で相次いでいるイルカの「かみつき」問題を取材するためだ。イルカがよく現れ、最も多くの負傷者が出ているのが、この水晶浜だった。

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福井県沿岸で50人を超える海水浴客らにかみつくなどしてけがを負わせたイルカは、どこから来たのか。目撃者の証言をたどり、共生の糸口を探ります。全7回の連載です。

 京阪神や東海地方から多くの遊泳者が訪れ、駐車場は満杯だった。

 浮輪を抱えた家族連れやカップルでにぎわう浜には、15分おきに、波音をかきけすほど大きなスピーカー音が響いていた。

 「イルカを見かけても絶対近づかず、触れないでください。刺激するとかまれたり、海中に引っ張られたりする可能性があります」

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野生イルカのかみつき事故が多い水晶浜

 私は水晶浜の他にも敦賀半島に10以上ある海水浴場を見て回り、砂浜の地形や漁港の位置などを確認していった。

 周辺の海域を所管する敦賀海上保安部にも立ち寄り、職員と情報交換して平穏を確かめた私は、午後4時に取材を切り上げ、半島を後にした。

 水晶浜で「事件」が起きたのは、その2時間後だった。

そのとき、実際何があったのか。記事の後半で動画とともにお伝えします。

 日が傾き、海が赤く染まり始…

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