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 讃岐うどんチェーン大手「はなまるうどん」には、伝説の社員がいた。

 武市(たけいち)信子(76)。高松市内にある1号店「木太(きた)店」で店長を含めて約16年間務め、退職した。

 はなまるで唯一、「名誉店長」の称号が与えられた人物だ。

 逸話の一つが、かけうどん。

 はなまるは、高松市のアパレル会社エイジェンスが2000年5月、うどん業界へ参入し、出発した。

 社内には当時、うどん作りの経験者が誰もいなかった。

融資の決め手となった一杯のかけうどん

「はなまるうどん名誉店長」の称号を受けた武市信子さん。木太店で約16年間務めた=2025年3月28日午前11時15分、徳島市、和田翔太撮影

 スタッフの技量の向上に貢献したのが、讃岐うどん店で働いた経験があった武市だった。

 まだ無名だった創業初期のころ、はなまる幹部が店舗拡大のために資金調達に奔走していた。

 ある銀行で融資担当者に武市の手打ちの「かけうどん」を振る舞った。

 これが好評で融資の決め手となった、と社内に伝わる。かけうどんの存在がなければ、はなまるの全国への飛躍はなかったと考えられている。

全国進出の途中で捨ててしまった個性

 はなまるが店舗縮小や海外撤退など厳しい状況と向き合うなか、武市の「味」が再び、社内で脚光を浴びている。

 語り継がれる「カレーかま玉」だ。

 はなまるは再成長をめざし…

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