3月18日、中国・上海郊外の長江河口。緑色の少し濁った洋上を、中国海軍の最新型空母「福建」が外洋に向かってゆっくり進んだ。周辺海域には航行制限がかけられた。
「世界最大の通常動力型軍艦」と言われる福建は、最大排水量8万トン、全長315メートル。2022年6月に進水し、中国初の電磁カタパルト(射出装置)を備えた同国3隻目の空母だ。この日は7回目の試験航行で「早ければ年内にも実戦配備される」(香港紙)。
【連載】シップウォーズ アジア太平洋の覇権
中国がアジア太平洋での活動範囲を広げています。背景にあるのは、急速に高まった造船能力です。一方、覇を競う米国の造船業には翳りも。船をめぐるパワーバランスの揺らぎは何をもたらすか、現場から報告します。
昨年12月には、大型の強襲揚陸艦「四川」(同4万トン)も進水し、台湾や南シナ海の島への上陸能力を高めている。中国海軍は艦艇の数では米軍を上回っており、大型水上艦の近代化も急ピッチで進んでいる。
「中国海軍は、ギョーザを作るように次々と新しい艦船を就役させている」。中国では大量の軍艦建造を大鍋でギョーザをゆでる「下餃子」の様子にたとえ、ネットメディアなどが海軍建設の勢いを誇っている。
20年前、中国軍は旧式の兵器が多く、とても米軍と競争できるレベルではなかった。ところが今、急速に近代化が進み、西太平洋に配備された米中の戦力をみると、中国の増強が際立っている。それにつれ、中国は周辺国・地域により威圧的になっていった。
中国が軍備増強を急ぐ理由は何か。
中国が胸に刻んだ「屈辱」
話は1995~96年の第3…