数千億円規模の再開発の計画が白紙になるという、異例の展開となった中野サンプラザ。事業者の野村不動産を苦しめたのが、事業コストの高騰だ。世界的な資源高に円安、人手不足が加わり、追い込まれていった。
工事費見積もりに目を疑った
「こんなに工事費が上がっているのか?」
2024年8月末、野村不常務執行役員の梶貴之と、同社中野プロジェクト推進部長の五箇(ごか)孝慎は、工事を担うゼネコンが出してきた見積もりに目を疑った。
2カ月前のものに比べて、費用が900億円も上がっていた。設備工事費が想定の3倍、エレベーター工事費が2倍。トラック運転手の残業時間が規制され、輸送力の不足が懸念される「2024年問題」で人件費も上がっていた。工事期間が建設業者の繁忙期と重なることも、コストを押し上げていた。
工事費は近年、上がり続けていて、梶はある程度の上ぶれは覚悟していた。
工事費の900億円高騰という異例の見積もりを突きつけられた事業者の野村不動産。記事後半では、中野区やゼネコンとの交渉を掘り下げます。
だが、想像をはるかに超えた…