せわしなく人や車が行き交う首都が日暮れを迎え、街灯の中に浮かび上がる広場。建国の父・毛沢東の巨大な肖像画が、そんな人々の営みを見つめる。
今は東京に暮らす浦効禹さん(30)は子どもの頃、毎年6月3日の夜に、父母に連れられて北京の天安門広場を訪れた。
遊具もなくて、つまらない。幼かった自分にとっては、そんな印象しかなかった。それでも、父は嫌がる息子の手を引いて、広場に通い続けた。父と一緒に外に出かけた、数少ない記憶だ。
【連載】灯火(ともしび)はいま 天安門事件35年
天安門事件から35年。中国、香港では事件がタブーとなる中、日本で追悼集会に集う中国出身の若者たちがいます。彼らはどう事件と出会い、なぜ弔うのか。世代を超えて事件と向き合い、葛藤する姿を追います。
そんな家族の「恒例行事」が、小学生のある年から消えた。後になって、公安(警察)関係者が、浦さん一家が広場に行くことを止めていたと知った。
父は公安当局の「要注意人物」だった。
日本で開かれる天安門事件の追悼イベントに集う中国の若者たち。ただ、事件とどのように向き合っていくのか、思いはさまざまです
周囲とのズレ感じる日々
中国の人権派弁護士として国…