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認知症基本法や認知症施策推進基本計画について語った、粟田主一さん=東京都板橋区の都健康長寿医療センター、辻外記子撮影

 共生社会の実現をめざす認知症基本法ができ、法にもとづく国の推進基本計画もできようとしています。注目されるのが、計画に盛り込まれる「新しい認知症観」。何を意味し、これまでとどう違うのか。基本計画を議論した有識者会議メンバーの東京都健康長寿医療センターの粟田主一医師にお話を聞きました。

 ――基本法をどう評価しますか。

 2019年にできた認知症施策推進大綱と比べ、世界観が大きく変わりました。基本理念に「全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができるようにすること」と記されています。

 認知症の人も、すべての国民と同じように基本的人権を持つ個人として認識され尊重される。意思の自由があり、希望を持って生きることができるということです。

 これまでの認知症施策にはなかった考えで、極めて大きな変化。これこそが基本計画にある「新しい認知症観」なのです。

 ――これまでも共生社会をめざしてきました。

 「尊厳と希望をもって認知症とともに生きる共生社会をつくろう」と確かにいってきました。それは同じなんですが、共生できるよう、悪いことが起きないよう、皆で見守ろう。安心して暮らせる社会をつくろうという側面が大きかったかと思います。

 でも、それだけでは真の希望はもてません。

 「認知症とともに生きる私たちの自立生活を支援してほしい」との願いにこたえようとする点が新しいのです。

 これは障害者領域で1960年代に始まった、自立生活運動(インディペンデント・リビング・ムーブメント)とよく似ています。

「会議出席、一言発言」でおしまいではだめ

 ――認知症の人は、自立や選択ができないのではと思う人もいます。

 確かに認知症の人は、意思決…

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