亡くなった長女の名前が書かれた過去のメモに手を添えながら、手話でやりとりする野村花子さん(左)と太朗さん(いずれも仮名)=2024年6月18日、大阪府内、米田優人撮影
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 半世紀前の記憶は、生々しく残っている。

 なにかがおかしい――。

 野村太朗さん(仮名)=大阪府=と妻の花子さん(同)がそう思い始めたのは、結婚から4年後の1974年、第1子の長女が誕生したあとからだった。

 生まれた日、太朗さんは、元気そうに手足を動かす赤ちゃんと対面した。髪にくせ毛。「自分にそっくりだ」。喜びがこみ上げた。

 2人は、親族の紹介で知り合った。太朗さんが花子さんに強くひかれ、結婚した。

待ちわびた我が子

 「子どもがほしいね」。そう言い続けてきた。みんなで釣りに行ったり、旅行に行ったり。そんな家庭を夢見ていた。そして、ようやく赤ちゃんを授かった。

 名前を決め、服なども準備して、誕生を待ちわびた。

 妊娠9カ月のとき、医師から…

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