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イヤホンで仏教のお経を聞きながら眠るようになったというドー・クアン・バーさん=2024年4月17日、東京都新宿区、内田光撮影
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 夜になるとドー・クアン・バーさん(45)は、イヤホンをして床に就く。聞こえてくるのは、ベトナム仏教のお経だ。

 夜眠るのが怖い、と思うようになってから、バーさんの人生は一変した。

 韓国料理やベトナム料理などの店が立ち並ぶ東京・新大久保の繁華街。そこから少し離れた古い賃貸アパートに、バーさんは住んでいる。

 全国規模のサッカー大会など在日ベトナム人のための大がかりなイベントを企画する一般社団法人「日本ベトナム国際交流機構(FAVIJA)」の代表理事。ベトナムの富裕層向けに日本でのメディカルツーリズム(医療観光)を展開する会社の社長。そんな華々しい肩書の割に、暮らしぶりは極めて質素だ。

 間取りは2DKで、6畳間の自室にはベッドが一つ。カーテンレールに掛かるスーツなどの衣服も、冷蔵庫や小さな机も、部屋にあるほとんどがもらい物だ。

 取材の日、バーさんは玄関横のダイニングスペースで、小さなプラスチック製の風呂いすに座って夕飯を食べた。メニューは厚揚げと豚の炒め物に焼き魚。「みんな、僕がもっと豪華なものを食べていると思っていると思うよ」とバーさんは笑う。

 夜眠るのが怖くなったのは1…

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