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【ニュートンから】宇宙農業の最前線(2)

 「宇宙環境の中で,植物に最も影響するのは重力です」と千葉大学宇宙園芸研究センターの髙橋秀幸センター長はいう。植物は重力を感知して根や茎などをのばす「重力屈性」をもつ。そのため,植物の生育には重力の存在が不可欠なのだ。植物は重力を感知して,「下」に根をのばし,「上」に茎頂(芽)をのばす。重力を感知できないと根が培地を飛びだして「上」にのびたり,芽が培地のある「下」にのびたりと,栽培条件によっては葉や根の配置がぐちゃぐちゃになってしまうこともあるという。

 植物の種類にもよるが,これまでの研究で地上の10分の1前後,つまり0.1G前後の重力がないと植物は重力を感知できないことがわかってきている。ISS内のような100万分の1の微小重力を植物は感知できない。

 髙橋センター長は,「植物の進化において,環境ストレスを軽減することは非常に重要でした。重力を感知することで,陸地での生活能力を獲得したのです」と重力の重要性を説明する。重力は植物の生存と生産性に深くかかわっているのだ。

 そのため,微小重力下で栽培するためにはさまざまなくふうが必要となった。植物は重力屈性だけでなく,光のある方向に茎や葉をのばす「光屈性」や,水のある方向に根をのばす「水分屈性」ももつ。これらの能力などを生かすことで,現在ではISSの微小重力下でも植物を育てることができるようになっている。

 問題は重力屈性だけではない…

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