2021年8月6日、ギリシャで山火事が燃え広がる中、避難のためにフェリーに乗り込む人々=ロイター

【連載】フロントランナーの試練 欧州気候危機 第2回

 気候変動対策のフロントランナーとして世界をリードしてきた欧州。記録的な熱波に加え、洪水や砂漠化、山火事などが相次ぎ、住民の暮らしを根底から揺るがしています。危機的な試練に直面する欧州の今を伝えます。

 欧州は気候変動とともに歩み、脱炭素への取り組みで世界をリードしてきた。そしていま、激化する自然災害などの脅威や、対策への逆風にも直面している。

 英国から始まった産業革命で、世界は化石燃料時代の幕を開けた。地球温暖化の主たる原因は温室効果ガスの排出だ。そのうち約75%が石炭や天然ガスなど化石燃料を燃やすことによる二酸化炭素(CO2)などの排出が占める。

 これまでの世界全体の累積排出量に対して、欧州連合(EU)27カ国と英国の合計は20.87%を占める。23.83%の米国に次いで2番目に多い。つまり、欧州には現在の温暖化を引き起こしたことに対する相応の歴史的責任がある。

厳しい政策「手本によるリーダーシップ」

 一方、欧州は工業化による大気汚染や水質汚染、森林破壊など環境問題にいち早く直面した。問題に向き合う中で生まれた先進的な環境政策は、外交にいかす「ソフトパワー」としても存在感を発揮している。

 1973年11月、首脳会議…

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